出羽三山の山あい
豪雪地帯の多層民家
旧朝日村田麦俣(たむぎまた)集落は、鶴岡と山形を結ぶ六十里越街道沿いにあり、出羽三山の一つ、湯殿山の麓に発展した集落です。古くは庄内藩の山守が定住した土地で、湯殿山信仰の広がりに伴い、街道の休息所・宿場として発達しました。
ご案内
~どうして大きな家を建てたの?~
民家移築準備の頃、昭和30年代の田麦俣の冬道
■厳しい冬を生き抜くための工夫
建物の新築や増築が難しい山間部の傾斜地の集落、田麦俣。県内有数の豪雪地帯で、冬の積雪時は1階が閉ざされるほどです。
そのため、居住空間だけでなく、当時は別棟とした仕事場・家畜の飼育場・トイレなどを、一つの建物の中にまとめました。
■多層民家の構造
建物は1階建てで、内部を4層に仕切る「一階建四層構造」です。田麦俣では3層部分を「チシ(ツシ)」、4層部分を「天井チシ(ツシ)」と呼びました。
~「明治維新」が変えた屋根のかたち~
田麦俣集落は、江戸時代には、出羽三山を詣でる道者や旅客を泊める旅籠屋もあって栄えました。しかし、明治維新の神仏分離令によって参拝者は減少します。
カイコに桑の葉を与える(酒井忠明氏撮影)
明治の中頃に絹産業が発展し、養蚕が盛んになると、山仕事の傍ら、家庭でも養蚕をするようになりました。
■風通し良く、光を採りいれる「高はっぽう」
養蚕の効率を高めるため、それまでは「寄棟造」だった屋根を改造します。妻側(側面部分)の屋根を大きく切り開き「高はっぽう」と呼ばれる破風窓を取りつけます。
また、屋根の平側(棟に平行する部分)にも、採光と通風を目的に「はっぽう」と呼ばれる高窓(破風)を取りつけました。
改造により屋根の形状が変化し、「武者がかぶる兜」に似ていることから、「兜造り」と呼ばれています。
~日本の歴史と風土を後世に~
移築前の渋谷家
昭和30年代、経済成長による生活環境や住居様式の変化に伴って、全国的に古い民家が消失していきます。
博物館の使命として、昭和39年に民家の移築を決断し、広く協力を得て、翌年、約30キロの山道を運搬して移築保存工事を行いました。
リサイクルでエコな暮らし
~知恵を使って無駄なく暮らした先人たち~
かわや(トイレ)
大便、小便とも、家畜の糞尿などと一緒に「肥溜(こえだめ)」に運び、発酵させて肥料にしました。
ナデ(手箒)
作業場などの掃除に用いるワラで作ったホウキ。冬の手仕事の一つで、12個作り綴りさげておき、毎月1つずつ使います。古くなったものは、敷き藁や焚きものに使いました。
囲炉裏の灰
雑木を囲炉裏にくべて火焚きすると、灰になります。この灰は、山菜のあく抜き、畑の肥料・農薬、洗剤や研磨剤として有効利用しました。
灰を水に浸したうわ水(灰汁、アク)で茹でた笹巻きも南庄内の名産です。
屋根の萱
萱葺きの屋根は、古くなった萱を新しいものに交換して維持します。これを「差し茅(さしがや)」といいます。抜き取った古い萱屑(かやくず)は、とても良い肥料になりました。
コモジブドン(コモジ布団)
稲わらをしごいて出た屑「わらざや」を入れて作った敷き布団。
綿花が育たない北国では木綿や綿は貴重で高価でした。
暖かく交換も容易で費用もかからないコモジ布団は、実用的で無駄がありませんでした。
猫あな
板戸や板壁の下隅に、小さな四角い「くぐり戸」があります。猫が自由に出入りできるしかけです。家にある食糧とカイコをネズミから守るため、猫を飼っていたのです。
ソロバン戸
いろりのある居間「オメエ(御前)」に入る引き戸の敷居溝には、そろばん玉に似た球状の滑車がはめこまれています。戸のすべりを良くするしかけです。
デベヤの床下
「デべヤ(出部屋)」と呼ばれる玄関のそばにある部屋は、若夫婦が寝る部屋。何と、その床下にはニワトリ小屋が!! (家の外から見える柵の中で飼っていました)朝早く起きられること、間違いなしですね!
さて、これは何に使う道具??
- ①座るため
- ②冬に使うそり
- ③運搬用
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正解は③運搬用
道具の名前をヤシェンマ(やせうま)といい、荷物を背負う時に背中にあてる木製の背負いばしご。
- A
- B
- ①猫のトイレ
- ②人のこたつ
- ③猫のこたつ
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正解は②人のこたつ
道具の名前はネゴコタツ。Aが「ネゴ」といい、火皿を入れる陶器。Bが「やぐらこたつ」布団をかけて使う。
正解は③雪ふみ
道具の名前は、俵靴(たわらぐつ)別名:踏み俵(ふみだわら)。雪を踏み固めるための藁靴で人が歩く道をつける道具。
- ①スニーカー
- ②フットマッサージ
- ③雪ふみ
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- ①カレー大盛用
- ②雪下ろし用
- ③いちごアイス用
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正解は②雪下ろし用
道具の名前は、ケシギといい雪かきべら(除雪用具)。屋根の雪下ろしなどに使用した。
- ①ハシゴ
- ②大黒柱
- ③うまいぼう
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正解は①ハシゴ
折りたたみ式のハシゴ。道具の名前は、棒梯子(ぼうばしご)。素晴らしい収納術です。
正解は③風呂
道具の名前は、鉄砲風呂。木のおけに、まきをくべる釜が付いた風呂。
- ①酒樽
- ②薪ストーブ
- ③風呂
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知ってますか??
仏壇と神棚はどこにある?
庄内の民家では、仏壇の真上に神棚があります。つまり、神と仏が同じ位置で上下に祀られているのです。これは他の地域ではあまり見られません。
これには「神仏習合と山岳信仰の影響」という説があります。
庄内の出羽三山は「生まれかわりの山」とされ、人が仏になり神になるという道筋が、家の仏壇と神棚の位置で表されていると考えられたようです。
これは何と書いてある?
(漢字一文字、家を守ります)
民家の屋根には「水」という文字がついています。これは、家を火災から守って欲しいという願い(祈り)を込めて、「水」を掲げているのです。
一度火事が起きたら、消化が困難で燃え広がってしまうため、「防火」は人々の切実な願いでした。今でも庄内では、台所など火のそばに、出羽三山神社の「火伏せの牛」のお札を貼っている家が多くあります。